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『グラスホッパー』伊坂幸太郎 ★★☆☆☆

 人間は哺乳類じゃなくて虫に近い。こんな内容の出だしで始
まる本書を出張で東京へ行く新幹線の中で読んだものですから、
行く先々で人間が虫に見えてきました。
 新橋から銀座へ歩く道は、日曜日だというのに意外に人がほと
んど歩いていません。銀座の中心街には肩と肩が触れ合うくら
いの人だかりです。甘い匂いを発する有名菓子屋や誰もが羨む
有名ブランド店、こうこうと光輝く街灯の数々。そんな甘い香
りに惹かれて自然と人々は吸い寄せられるのです。甘い蜜があ
るところに虫は密集するのです。ネオンや街灯に引き寄せられ
るのです。
 そんなことを思いながら、ホテルに戻って続きを読み始めま
した。

《印象に残ったセリフ》

○「自殺する奴っていのが大嫌いなんだ。人間だけだぜ逃げる
 ように死ぬのは。偉そうじゃねえか。どんなに酷い環境に置
 かれたって、動物は自分から死のうとしねえよ。自分たちが
 生き残るために、他の動物がどれだけ犠牲になったか知って
 るからだ。人間ってのは、 傲慢だよ。」

○「今、この国では1年間に何千人もの人間が、交通事故で死
 んでいる」(略)「テロリストだって、そんなに人は殺さな
 い。無作為に、1万人近く殺すテロリストなんていない。
 だろ?負傷者を含めれば、もっとひどい数字になる」(略)
「それなのに、車に乗るのはやめよう、とは誰も言い出さない。
 面白いものだ。結局人の命なんて二の次なんだ。大事なの
 は利便性だ。命より利便性だ」

(以下、ネタバレ注意)

《ストーリー》

 三人の主人公の視点で話が展開される。妻を轢き殺され、そ
の復讐を果たそうとする鈴木。自殺させる殺人者、鯨。一家殺
人を得意とする若き殺人者、蝉。
 鈴木は、妻を轢き殺した男の会社「令嬢」に潜入するが、男
は「押し屋」によって車に轢かれ死亡する。

  会社の命令で押し屋を追う鈴木。押し屋を見つけ名を馳せ
ようとする蝉。押し屋を殺すことで、過去の苦い思いを清算し
ようとする鯨。
 別々の人生を歩んでいた三人が「押し屋」をターゲットに次
第に重なり始める。

押し屋の自宅に潜り込んだ鈴木だったが、そこは家族円満の
家庭だった。
しかし、それは偽装家族で、自宅まで追われるように計算づ
くしたものだった。その目的は「令嬢」の壊滅だったのだ。

グラスホッパー (角川文庫) Book グラスホッパー (角川文庫)

著者:伊坂 幸太郎
販売元:角川書店
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