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2009年1月

『かつどん協議会』原宏一 ★★★★★

 表題作の他、2編が収録されています。
 なかでも私のお気に入りは「くじびき翁」。
 政治をくじびきで決めようという理論(ロトクラシー)がメディア
を騒ぎ立てるという話なのですが、最初はアホらしく思っていま
した。

 でも読み進めていくうちに説得力のある理論と思えてくるから
不思議です。
 確かに、これだけ価値観が多様化している世の中で全員賛成
の政策なんてありません。賛否両論あって当たり前。
 それは、どれが正しいなんて誰もわからないということです。
だったら運という名のもとにくじびきで決めてしまおうという
考え方もありなんじゃないかと思えてきます。
 著者の発想力にはいつも驚かされますが、今回もそれは変わ
りません。

 もう一つの「メンツ立てゲーム」は、「謝罪士」なる謝罪の
プロが活躍する話しです。「謝罪士」という職業。奇想天外な
発想というだけでは終わらせてはもったいないほど、あっても
よさそうな職業です。

 最後に表題にもなっている「かつどん協議会」。
 一見、バカらしく思えてくる話しですが、それは目先しか見
えていないということかもしれないと読後に思いました。これ
は、自分の職場の会議でも同じような現象が起きているのでは
ないだろうか。振り返ってみるとまさに「かつどん協議会」と
思わずにはいられません。それは日本の政治もそうかもしれま
せん。もっと言ってしまえば、世の中が「かつどん協議会」の
世界観に凝縮されていると言っても言い過ぎではないのではな
いでしょうか。

 本書に限らず著者の発想力にはいつも敬服するばかりです。

かつどん協議会 (集英社文庫) Book かつどん協議会 (集英社文庫)

著者:原 宏一
販売元:集英社
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『忙中漢話』渡辺哲雄 ★★★☆☆

 サブタイトルに「漢字が開く心の扉」とあるように、漢字一
文字から想起される著者の過去の体験や考えを綴ったエッセイ
です。

 読書からインスパイアされることを綴ろうとしているこの
ブログと趣旨が似ているような気がして親近感が湧きます。
(もちろん、表現力や語彙力など比べものになりませんが)

 それにしても漢字一文字をきっかけに、過去の自分の体験や
ものの見方、考え方などこれほどまでにさまざまな想いをめぐ
らせることができるのはすごいと思います。

 しかし、誰でも何かをきっかけにしてダムがせききったよう
に昔の思い出が溢れ出ることがあるのではないでしょうか。

 それが漢字かどうかは人によって違うでしょうが、漢字を見て
想像力を働かせるのもおもしろいかもしれません。忘れかけて
いた過去の自分体験や思わぬ発見や新しいひらめきに出会うこと
ができるかもしれないのです。本書のように。

忙中漢話 漢字で開く心の扉 Book 忙中漢話 漢字で開く心の扉

著者:渡辺 哲雄
販売元:中日新聞社
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『あの頃ぼくらはアホでした』東野圭吾 ★★★☆☆

 東野圭吾氏の作品はこれまで『白夜行』や『幻夜』、『さま
よう刃』などを読んできましたが、どれものめりこみました。

 一気にひきつけられる作品ばかりで、そんな作品を何冊も書い
ている東野圭吾氏に興味が湧きました。

 そこで、自身の小学生から大学生時代のエピソードをまとめた
エッセイである本書を手に取りました。

 意外だったのが、東野氏は本嫌いだったということです。小説
の類はもちろんのことマンガすらほとんど読まなかったようで
す。文学少年の読書家がそのまま物書きになったというイメー
ジを持っていましたがそうではありませんでした。しかも、学
生時代は普通の学生と同じようにクラブ活動やコンパをし、な
んら自分と変わらない生活をしていたことで身近に感じました。

 さらには愛知県の企業に就職をし、働きながら江戸川乱歩賞を
目指していたということを初めて知りました。

 本書は、東野圭吾氏に少しでも興味がある方は、楽しめる本だ
と思います。

あの頃ぼくらはアホでした (集英社文庫) Book あの頃ぼくらはアホでした (集英社文庫)

著者:東野 圭吾
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『女の子が幸せになる子育て』漆紫穂子 ★★★☆☆

 子育ての究極な目的は「子どもの自立」だと思っています。
 親がいなくなってもひとりで生きていけるようにするという
ことです。
 まだ、私の子どもは4ヶ月になったばかりの男の子で、子育
てというよりは育児です。ただ、いずれ大きくなり子育てに迷っ
たときは、今自分がしていることは子どもの自立につながって
いるのかを考えるようにしたいと思っています。

 また、子どもの運動会で一等を決めないなど「競争」を否定
的にとらえる風潮もあるようですが、私は反対です。
 社会に出れば、「競争」を避けては通れません。子どもの頃
に遠ざけていた「競争」というものが、いざ社会に出て目の当
たりにしたときに果たして順応できるのでしょうか。子ども
の頃からある程度の「競争」は必要だと考えます。

 本書では、限られた価値観しかないところでの「競争」の
危険性を述べています。いろいろな形の「競争」が必要だと
いうのですが、それは私も同感です。

 本書にはそんな私の考えを後押ししてくれる内容も多数あり、
しかも、わかりやすい具体的な内容で書かれています。本書は、
女の子が幸せになる…という題名となっていますが、決して女
の子に限った内容になっているわけではありません。現に私の
子どもは男の子ですが、参考になることはたくさんありました。

以下、興味深かった内容をまとめます。

○自立した子どもを育てるためには、子どもが自分で判断し選
択する機会を与えてやることが必要である。それが失敗すると
わかっていたとしてもときには目をつぶる勇気が必要。

○今の子どもたちを取り巻いている環境は親の世代とは違う。
子どもの少ない経験では処理できない問題があふれている。

○門限は、家族の信頼を裏切らないようにと自由にブレーキが
かかる「心のストッパー」である。

○年中行事は、季節感を感じ、自然への畏敬の念や感謝の心を
感じる大切な機会であり、七夕や節分など家族のコミュニケー
ションの機会ともなる。

○江戸時代の町人の心くばりとされる江戸しぐさに「うかつあ
やまり」というものがある。それは道で人とぶつかったとき、
ぶつかったほうは「ごめんなさい」と言うが、ぶつかられたほ
うも「うかつでした」と返す、いわゆる気配りや気遣いを大切
にした考え方。

○子どもが自分を卑下したり諦めている場合は、「本当はどう
したいの?」や「もし、できたとしたら?」と声をかけるのが
有効的。

○子どもが否定的ともとれる行動をしたときは「本当はどうし
たかったの?」と子どもの意図をくんであげることが大切。

○家庭に仕事を持ち込むこともときには必要。子どもが身近な
社会人は親であり、そこから子どもが将来の仕事を考えるきっ
かけとなる。

《印象に残った言葉》

○美しいものを美しいと感じ、季節の移り変わりを楽しめる心
は、形のない財産です。そうした心があれば、ふと道端の草を
見たとき、虫の音を耳にしたとき、あるいは、食卓に上る旬の
食材に触れたとき、季節を感じ、自然とのつながりを実感でき
るでしょう。大人になって忙しい日常のなかで感じるそんな一
瞬が心の余裕になります。

○すっぱい葡萄の心理
  キツネが高い木に美味しそうに実っている葡萄を取ろうと
一生懸命になるが結局取れない。どうせ酸っぱい葡萄だからや
めとこうと自分に言い聞かせて去っていくというイソップ寓話。
 満たされない欲求に対し、自分にとって都合のいい理由をつ
けて行動を正当化したくなる心理のこと

女の子が幸せになる子育て Book 女の子が幸せになる子育て

著者:漆 紫穂子
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『ビタミンF』重松清 ★★★★★

7篇の短篇集。主人公は、小学生や中学生の子を持つ40歳前
後の父親です。自分はまだその年齢に達していないし、子ども
が小さいですが、感情移入して読むことができました。

 子どもへの接し方や家族のあり方、いじめ、少年犯罪など親
としてどう考えるべき、どうすべきなのか、短篇のそれぞれの
シチュエーションで考えさせられました。

 子どもを持つ親としては、いろいろ得るものがある小説だ
と思います。
7つの短篇のうち私のお気に入りは次の3つです。

〇ゲンコツ
  夜中、自動販売機にいたずらする少年グループに対し、勇
 気をふりしぼって注意する同じくらいの歳の子を持つ父親。
 大人が子どもに正義をふりかざすのが難しくなった時代だな
 とつくづく感じた。

〇セッちゃん
  いじめられているのに気丈に振る舞い、そのいじめられて
 いる自分を友だちにすり替えて話しをする娘。それを知りな
 がらも話しを聞くしかできない父親。
  もし、自分の子どもがいじめられているとわかったとき、
 子どもにどう声をかけてやれるのだろうか、自分はどういう
 行動に出るのだろうか。

〇かさぶたまぶた
  子どもの気持ちをわかっていたつもりでも実はぜんぜんわ
 かっていなかった父親の苦悩。
  父親には強さを持つだけでなく子どもの弱さを受け入れる
 姿勢を持つことが求められると感じた。また、子どもにとっ
 ての家庭のあり方についていろいろ考えるきっかけとなった。

ビタミンF (新潮文庫) Book ビタミンF (新潮文庫)

著者:重松 清
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『さまよう刃』東野圭吾 ★★★★★

 あけましておめでとうございます。 
 2009年、最初の本です。年末年始の休みに没頭して
読みました。

  子どもを持つ親として感情移入した本です。
 自分の子どもが蹂躙され殺害されたら、親として自分はどん
な行動をとるのか。
 たぶん、本書の主人公と全く同じことを思い、同じことをす
るんだと思います。
 被害者当人であれば当然の行動ではないでしょうか。
 
 こういった類の本を読むとついつい被害者側に感情移入して
しまいますが、加害者側の親という視点も大切だと思いました。
 子どもが加害者とならないようにするには親としてどういう
教育をすればいいのだろうか。1歳にも満たない子を持つ親と
してはこっちのほうを真剣に考えさせられました。

 直感的に感じたのは二つのキーワードです。孤独になる勇気と
他人の痛みを感じる想像力です。
 
 グループから抜けてでも、抜けてからの報復があるとしても、
他人の痛みを想像し、自分の信じた正義を貫く勇気を持つ。そ
んな子どもになってほしいのですが、親として何ができるので
しょうか。

(以下、ネタバレ注意!)

《ストーリー》

 女子高生の絵摩が少年にレイプされ殺害された。その親長峰は
少年への復讐を決意する。長野県に潜伏する少年の居場所をペ
ンションを経営する女性の助けや謎の密告者の助けを得て探し
求める。マスコミや大衆、警察までも本当の正義とは何かを考
えさせられる。
 長峰は少年を猟銃をつきつけるところまで追い込んだが、長峰
は警察に射殺される。
 謎の密告者は捜査に関わる警察の班長だった。

さまよう刃 (角川文庫) Book さまよう刃 (角川文庫)

著者:東野 圭吾
販売元:角川グループパブリッシング
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