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『大河の一滴』五木寛之 ★★★★★

(99年読了) 

 この本との出会ったのは、今から10年くらい前の
大学4年のときだった。

 それからの生き方を大きく変えた大切な本である。
 根っからのマイナス思考で、悶々としていた私に
そっと手を差し伸べてくれた思いだった。

それが、本書にあったマイナス思考からの出発という
考え方であった。この考え方にはずいぶんと救われた。

 他人に期待しない。人生に期待しない。

 少し虚無的ではあるが、私にはすっと腹におち、肩の
荷が軽くなった。魔法の言葉をもらったようで、目の前
がぱっと広がった思いだった。今でもこの考え方は、
私の思想の根本をなしている。
 
 また、世の中を鋭く切り取る著者の視点は、新鮮だっ
た。当時、私は世の中で起こった出来事をただやる過ご
すだけで、自分なりの考えや思いなど考えようともしな
かった。

 本書を読んでからは、世の中の出来事について目も
向けるようになり、自分なりのとらえ方を意識するよう
になった。人生の幅が広がる思いだった。

 それからというもの、著者の虜になり、今まで出版
されているエッセイ関係の本はすべて読み漁り、新刊は
今でも読み続けている。

 それだけでは、満足できず著者の講演会などがあると
東京だろうが大阪だろうが追っかけるようになった。

 さらに、昨年、念願の五木氏とことばを交わすことが
できたのだった。

 今でこそ完全に五木氏の信者である私だが、その出発点
はこの本だったのだ。

《元気が出る言葉》

○結局は、時間が解決してくれるのを待つしかないのだ。
 時の流れは、すべてを呑み込んで、けだるい日常生活の
 くり返しのなかへ運びさってゆく。待つしかない。
 それが人生の知恵というものだろう。

○人生というものはおおむね苦しみの連続である、と、
 はっきり覚悟すべきなのだ。

○何も期待しない覚悟で生きる。
 親は子に期待してはいけない。子も親に期待すべきで
 はない。人を愛してもそれはお返しを期待することで
 はない。(中略)
 だから夫は妻に期待すべきではない。(中略)自然に

 持続することを無意識に期待するのは、まちがっている。

○私という自分二つある。(略)すべての人間と共通して
 いる自分と。だれとも異なるただひとりの自分。その
 二つの自分は、ときとして対立し、ときとして同調する。

○生きた、ということに人間は値打ちがある。どのように
 生きたかということも大切だけど、それは二番目、三番目
 に考えればよい。生きているだけで人間は大きなことを
 成し遂げているのだ。

○マイナス思考のどん底のなかからしか本当のプラス思考は
 つかめない。

《書きとめておきたい言葉》

○私たち哺乳類は一生のあいだに約5億回の呼吸をあたらえ
 られて生きている。
(「ゾウの時間ネズミの時間」本川達雄)

○人間の傷を癒す言葉には二つある。ひとつは「励まし」で
 あり、ひとつは「慰め」。
 慈悲の「慈」が励まし、「悲」が慰め。

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