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『遊行の門』五木寛之 ★★★★☆

 私は福祉を仕事にしているので、高齢者と接する機会は
多い。
「面倒かけてすまないね」と本当にすまなさそうに詫びる
高齢の方は多い。
 元気な方でも、人の助けを得なければいけない状態が
来ることに恐れおののいている。 
 それは、当たり前のことかもしれない。
 ただ、本書の言う「遊行期」、子どもに還っていく時期
なのだ。
 本人よりも関わる我々が当然のこととして理解していな
ければいけない。

 

「遊行期」、すなわち人生の最期は、子どもに還って
遊び、戯れる時期であるという。

 体が不自由になり、人の助けがないと日常生活がおくれ
なくても、まして下の世話をしてもらうことになっても、
それはあたりまえのことなのだ。

 幼な子はみんなそうなのだ。
 何も恥じることはない。人はみんな人の世話になって
下の世話もしてもらい、育ってきたのだ。

 子どもに還るとは、その道を戻っていくことなのである。

 本書は、遊行期の話だけではない。格差社会や鬱の話し、
鬱と躁の考え方で時代をみた、著者の独自の視点もたくさん
盛り込まれている。

 以下、印象に残った言葉を自分の言葉でまとめておく。

《書きとめておきたい言葉》

○格差社会が最近話題となるが、そもそも人間は産まれた
 ときから格差を背負っている。

○人は生きているだけで価値がある。

○ブッダは自分の思想を書物に表していない。
 人々に語ったのだが、独白ではないことが重要である。
 文章であっても独りで書くものだ。
 あくまで対話、質問に対しての答えが重要としている。

○最近の医学は、細分化し、何かと人間生活の乱れに対し
 ひとつひとつ病名をつけ、病気のうちに入れてしまう
 傾向がある。高血圧しかり、ウツ気分しかり、メタボ
 しかり。

○明るさと暗さは人生の両輪。

○生きることは、楽しさだけではなく、鬱という思い荷物
 を背負って歩くことと覚悟する。

○常に変化し、老いていく体と心をできる限り安定した
 状態に保つための工夫が養生である。

遊行の門 Book 遊行の門

著者:五木 寛之
販売元:徳間書店
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